「束縛し合う二人」#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8
体を洗いながら、
セックス後に、かならず哲夫を思い出す。
哲夫に今日もクンニさせて、きれいにさせよう。
今日のこのくたびれたセックスの責任を哲夫にとらせよう。
真子は、
体を丁寧に洗ってバスローブの袖に手を通す。
そこで、ふと手を止める。
「ここで帰らされるかもしれない。」
一人ごとを漏らす。
バスタオルだけまいて、ベッドルームへ戻ると
案の定というか、
今野がもう服を着て身支度を整えていた。
「まだこの後何件かアポがあって、
ちょっと悪いんだけど今日はここまでで。
また連絡するから。
真子も着替えて支度してもらっていいかな。
旦那もヤキモチやいて
心配してるかも、
って言ってただろ。」
早口に説明口調でまくし立てる。
言い訳がましいがさっさと帰れ、ということらしい。
「仕事のアポねえ・・・。
私と今野くんって、何なのかしらね?」
「どうしたのさ。仕事だよ。
俺たち、セックスの相性はバッチリじゃ無いか。
俺が日本に帰ってくるのは、真子に会いたいからなんだよ。」
「ふーん。」
なんだか、噛み合わない。
肝心なことには答えない。
真子は、下着をつけて服を着替える。
ボサボサにされた髪を乾かしながら整える。
さっきまで盛り上がっていたが、
終わってみると、
毎度どうしてこんな男とセックスしてしまったのだろうか
と思うこともある。
前戯で終わってしまったような物足りなさが残る。
「また、会おうぜ」
「うん、またね。」
そう言って、部屋を後にする。
スマホをチェックすると夫からのメッセージが何件か届いていた。
その何気ない用件だったメッセージに返信を返す。
「今も、今野くんとあってたよ」
「そうだったんだ。
今朝はヤキモチやいて悪かったよ。
真子が自由にしていてほしい、
ってのは本音だよ。
どこで何してても、
真子を信じてる、と言い切れなかった自分が悔しかったんだよ。」
哲夫が自由にしたい、
と言ってくれる度に、
クンニでがんじがらめにされているような気がする。
でも、ふわふわと飛んで行きそうな自分を
つなぎ止めてくれる
鎖が心地よいのと真子はおもった。