束縛しあう二人#1|実話ショート

ショート「束縛し合う二人」#1 #2 #3 

哲夫と真子。元々二人は愛し合う夫婦だったが

お互いのちょっとした行き違いからギクシャクしだしていた。

夫婦ともに社交的な性格で、男女隔てなく交流していた。

フットワークが軽く、

ちょっとした飲み会にも、

それぞれに気軽に参加しあい

知人からも「結婚してたの!?」と驚かれることもしばしば。

それほどに自由な空気を出していた。

朝食を食べはじめる二人、しかしそこには緊張が走っている。

「こないだ、静香が泣いてたから、抱きしめて慰めた、って話を噂で聞いたけど。

ちょっとやり過ぎじゃ無い?」

真子は目線を外しながらだが、語気を強める。

「うん・・、ちょっとこのままだと収拾つかないかな、って思って。」

「何の収拾よ。」

間髪いれずに真子が答える。哲夫の目を見る。

「その後、どうしたの?」

「いや、特に。それで終わりだよ。家まで車で送って終わり。」

哲夫のマグカップを持つ手がふらふらと揺れている。

「ふーん。収拾ついたの。」

「うーん。まあね。」哲夫は苦笑いをしてコーヒーを飲む。

「今もやりとりしてるんでしょ。」

「まあ、向こうから来ればね。」

「向こうからくれば、ねえ。」

真子はマグカップを両手でぎゅっとつかむ。

「そういうお前だって。こないだも今野くんと二人でカラオケ行ったって聞いたけど。

いい大人が二人でカラオケって。近所の目もあるから、ちょっとやり過ぎじゃない?」

「近所の目って、何よ。どこに近所の目があるのよ。」

「いや、まあ近所の目はどうでもいいんだけど。既婚者の男女二人がカラオケって、どうなのよ、ってことよ。」

「何にも無いわよ。」

「何にも無い、ってことないでしょ。すでに二人で楽しくカラオケしてるってのがどうなの?ってことよ。」

「わかったわよ。もう男の人と二人でカラオケには行かない。それで満足ですか?」

真子は、マグカップを強くテーブルに置く。

「そんなことを言ってるわけじゃないよ。」

「じゃあ今野くんともう二人では会わない、それで満足?」

「満足とか、満足じゃ無いとか、そういうことを言ってるわけじゃない。」

「哲夫だって、他の女を抱きしめておいて、妻に説教できるわけ?」

哲夫はだまりこむ。

二人は朝食をそのまま無言で食べ続けたあと、

身支度を終えて仕事へいった。

ショート「束縛し合う二人」#1 #2 #3 

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