<彼女の下着は>
照が恐る恐るドアをあけると、
40代くらいの細身の男が立っている。
白いTシャツの上に紺のジャケットを羽織っている。
どこにでもいそうな男だ。照は念のため男に確認する。
「えーと、どなた様ですか?」
「Xでテルさんと約束した、関根と申します。」
関根と名乗るその男は、その場で会釈した。
「よかった。僕がテルです。関根さんわざわざすみません。
ただ、ちょっと今、まだちゃんと彼女に伝わってなくて、
あの、そういう、まだ寝取りとかそういうんじゃないんですけど、
大丈夫ですよね。」
「もちろん、大丈夫ですよ。
何かお役に立てることもあるかもしれませんから、
一緒に楽しくお話でもしましょう。
飲み物も買ってきましたよ。」
と関根はドソキの袋を持ち上げて微笑んだ。
照と関根が部屋に入るとソファに明里が腰掛けて二人を睨んでいた。
「ちょっとどういうことか説明してほしいんだけど。」
照はその場で天井を見上げながら、
たどたどしく
「えーっと、あのー、ネットで知り合った関根さん。」
明里は手招きをして、照を呼びつける。
「いいからこっちきて。」
照にひそひそと耳打ちする。
「そんなネットで知り合っただけの、あったこともない人を部屋にあげて照くんは何考えてるの!すぐ帰ってもらって。」
すごい剣幕だ。
二人の様子をさとった関根が口をひらき、
「すみません。私がご迷惑をおかけしたみたいで・・・。」
申し訳なそうにあやまる。
「私は今日は帰りますね。
これ、お土産だけでももらってください。
なんかおいしいってニュースでみたポテトチップスとジンジャーエールとか、
まあその辺で買った差し入れですので。」
「いやいやっ、関根さんすみません、僕が呼んだんですから。」
照が引き留めようとするものの、
「いえいえ、やはり女性の心証が第一ですから。またの機会に。」
そそくさと関根はテーブルの上に袋を置くと帰ろうとする。
袋の中をちらっと見た明里。
「あっ、このポテトチップスって期間限定の。全然手に入らないってXでもトレンド入りしてたやつ。」
明里がポテトチップスに興味を示した。
関根が振り返り答える。
「喜んでもらえてよかったです。
今朝、ちょっと早くに用事があったもので。試しにドソキの前を通りかかったんです。そうしたらちょうど入荷したばかりで店頭に商品を並べてたんですよ。
だから買えたんですよ。すごいおいしいっていうから、楽しみですよね。」
明里はさらに袋の中を見ながら、
「このジンジャーエールもドソキじゃないじゃないですよね。
すごい有名な高級ジンジャーエールですよね。何千円もする。」
関根は明里が特別なジンジャーエールに気づいてくれて喜んでいる。
「ついつい、おいしいって言われると目がなくて。
イセタソで仕入れてきました。
奥様のお眼鏡にかなったようであれば光栄です。」
「奥様じゃないんですよ。
私たちは訳ありカップルなので。
それに、奥様っていう柄でもないです私。」
明里が答える。
「それは失礼しました。
お似合いのカップルで、大変仲が良さそうでしたのでご夫婦かと勝手に思ってしまいました。
私は関根と申します。はじめまして。えーと、なんとお呼びすれば・・・。」
明里はすこし申し訳なさそうに口を開いた。
「私は明里です。ちょっと強く言いすぎてすみません。何も聞かされてなくてびっくりしてたので。」
「照さんと明里さん、名前も二人も明るいお名前で、やっぱりお似合いですね。」
照がビニールの中をごそごそしながら関根に聞く。
「関根さんはビールとか飲まれないんですか?」
「お酒やめてしまったんです。
マラソンやトライアスロンをするようになって。
もちろん、お付き合いすることはありますけど。
ただ女性がいる席では飲まないんです。
だからノンアルコールがいいかなって。おいしそうな炭酸をあつめてみました。」
「何で女性がいると飲まれないんですか?」
明里が興味本位に聞く。
「勃起しないと、困りますから」
関根の満面の笑みで返されて、
明里は「やっぱり無理!」と身構えた。
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