私の妻だぞ 変態はバーにいる#8

関根が男にやさしく微笑みかけて手を差し伸べる。

「それに、旦那さんここにはアリサちゃんなんて人いないよ。いるのはあそこにいる素敵なリサちゃんだけさ。」

「リサ・・・。私は、テツです。ええと」

手を引かれて起き上がるテツ。

そしてリサの方を向く。

下着姿のリサを隠すように立つ、長身の男が目に入る。

「僕は関根だよ。あっちにいるのがトニーさん」

トニーが軽く会釈をする。

私の妻だぞ、と怒りたい気持ちが沸く。

しかし、場に飲み込まれている。マスターが怖い。ここにいる男達が怖い。

リサは望んでここにきたんだ。

招かれざる客は私だ・・・。悔しい思いがテツの頭をよぎる。

リサがここへ来ることは分かっていた。でもそれはただの私への当てつけだと思っていた。

それなのに、本当に自分の知らないところで、

知らない男とセックスしようとしていたなんて。

テツは、状況が飲み込めないままだった。

マスターが優しく声をかけ、カウンターへと案内した。

「テツさんお飲み物はどうされますか?」

さっきの鋼鉄の壁のようなマスターが、今は柔和な笑顔を見せくれている。

テツは泣きそうになった。

「ええと、じゃあ、ビールをください」

テツは素直にカウンターについた。

その一連の様子を呆然と見つめるリサ。

ビールなんて珍しい、ほとんど飲む事なんて無いのに。

あの人、いったい何しにきたのかしら。度胸もない癖に。

それともここで、ナンパでもして私に当てつけでセックスでもしてみせようってこと?

ほんと、望むところだわ。

あなたのあのセックスで喜ぶ女なんてどこにもいないのよ。

リサはトニーの胸に、身体を預けた。

「トニーさん、私、覚悟は出来ているんです。あっちの部屋へ連れてってくれませんか。」

トニーが頭をかく。

「ほんとですか?大丈夫かなあ。」

「大丈夫です。あの人が何しにここへ来たのかわかりませんが、とりあえずカウンターについたんだから。落ち着いたんだと思います」

「そうですか。ただ関根さんがなあ」

「関根さんがなにか?」

「きっと、よからぬことを考えてると思うんだよね」

トニーが見つめる先には、テツに張り付いて座る裸の関根の姿があった。

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